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あれ以来、裕美に会っていない。あれから、もう半年たつ。裕美のことって夢だったのかな・・・そう思うほど・・・もう、会社でも裕美のことを口にする子はいない・・・あの1日あとに辞表を出したらしい・・・・。そして、裕美は消えた・・・・。わたしは自分のマンションに戻った・・・以前のままのお部屋・・・・・テーブルの上には裕美にとりあげられたはずの通帳やカード、財布が置かれていた。通帳も以前のまま、引き出した形跡とかはない・・・むしろ、使っていないお給料の分だけ増えていた。
裕美のマンションにも行ってみた。でも、もう引き払ったあと・・・・優華も一緒になのかな。真由美さんに聞いても知らないっていうし・・・・。もう、彼女に会うことはないのかな・・・・。
わたしの方は大きな変化があった。そう、真由美さんのところでオークションにかけてもらったのだ。そして、宝生さんと言う人に落札していただいた。たぶん本名じゃないけどクラブではそう名乗っている人。真由美さんのオークションは奴隷にも選ぶ権利はある。交渉する順番を決めるだけのもの。1位の人から順番にわたしが決めるのだ。宝生さんはわたしに5000万という金額を提示した。でも、お金は関係ない・・・・わたしは彼の目・・・それに惹かれた。何かなつかしいようなそんなものを感じた・・・・。それから、彼に奴隷として仕えている。今、私の中には新しい命が芽吹いていた・・・。
彼はバツ2で52歳。落ち着いた風格とロマンスグレイの髪・・・・。そして厳しくわたしを調教する。そして、調教のあとはわたしをやさしく抱きしめる。
「今度、娘に会ってくれないか。」
「えっ・・・でも・・・わたし・・・・」
「是非、君を娘にあわせたいんだ。」
ベットの上で甘えるわたしを引き離して、真剣な顔でわたしの顔を覗き込む。
「いいよ。このままで、この子もわたしが育てるから・・・・」
その子を裕美みたいにしたくない・・・。わたしは子供を一人で育てようと思っていた。
「とりあえず、会うだけでもいい・・・」
強引な彼。わたしを抱きしめる。こうされると、わたしは・・はいっ・・って言うしかなくなるよ・・・・。
「じゃあ、今度の土曜日。いつものホテルで・・・」
「はい・・・・」
一抹の不安はある。でも、彼のいうとおりにするしかない。わたしは彼に甘えるように全裸の身体を彼の胸にこすりつけた。
いつも彼が利用する豪華なホテル。そのロビーで周りを見回す。まだ彼は来ていない。そして目の端に違和感。えっ!ソファーにふてくされたような顔をして座ってる子・・・・裕美・・・・。わたしはその方向を向く。裕美もこちらに気がついたみたい・・・わたしに微笑んで以前の裕美のように手を振る・・・・・。そして、わたしは裕美の方に近づく・・・話したいことがいっぱいあった。
その時、ロビーに慌てて入ってくる彼・・・彼はわたしにすこし手を振って・・・裕美の方へ・・・えっ・・・・でもそこには裕美のほかに女の子はいない。裕美と何か話す彼・・・そしてわたしを指差す。裕美の驚いた顔・・・・それはすぐにほどけて・・・笑顔になる。わたしの方に歩いてくる2人。至近距離へ。黙っているわたしと裕美・・・。彼が照れたように口を開く。
「これは娘の裕美だ。そして、こちらは黒田佳奈子さん・・・・」
「知ってるよ。」
裕美が蕩けるような笑顔になる。そして、わたしの腕につかまる。わたしも笑顔で裕美を見つめる。その2人を驚いたように見る彼。わたしと裕美はそんな彼の表情を見て、顔を見合わせて声を上げて笑いあった。本当の母娘のように・・・・。