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「待っていたよ」
男たちが立ち上がる。
わたしは顔を伏せるしかない。
「なかなかの上物ですね。
やっぱり一流のSMクラブは奴隷の質もいいですね」
身体を男たちの視線が這い回るのがわかる。
私は本能的に両手で身体を隠す。
「一匹はあんま慣れてないからね。
そういうのがいいってリクエストだったよね」
綾菜さまがクールに言う。
「ええ、あんまり慣れてるのもね。
泣き叫ぶくらいほうがいいんですよ」
「うん、素人の人妻だよ。
何をしてもいいけど、壊すのと顔出しはNGだからね」
「フフフ・・・それは楽しみですね」
男たちの下卑た笑い声。
わたしたちを取り囲む男たち・・・
わたしは早紀さんに身を寄せる。
みんな中年から初老にかかった男たち・・・
着ている服も高そうな生地の服ばかり・・・
かなりの地位にある男たちだと思われる。
その中の一人に目が行く・・・
声を上げそうになる。
そこには、アナウンサーをやっていたときの上司・・・
敏腕プロデューサーとして有名な沢水信介・・・
わたしにいろいろとちょっかいを出してきたヤツ・・・
こいつが敏腕なのは企画力とかそういうのではない。
政治力でのし上がった男・・・
いろいろな悪いうわさを聞いている・・・
売れないアイドルの卵をスポンサーに抱かせたり・・・
わたしもコイツには何度も誘われた。
先輩アナからも注意するように言われてたし、
何よりもコイツの蛇のような粘着質な目が嫌いだった。
何度も誘われて、断ると今度は仕事で仕返しをするようになった。
その前にわたしの人気が急上昇して、コイツの力が及ばないようになったんだけど、
そうならなかったらどうなってたかわからない。
沢水に目をつけられた新人アナが性奴隷のようにされてやめていったという噂もきいたことがある。
沢水がわたしに近づいてくる。
そして、わたしの顎に指を当て顔を上げさせる・・・
「ふぅん、なんか北城若葉に似てるな・・・」
その蛇のような瞳で見つめられると、心まで凍るような気がした。