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美容院も行ったし、メイクも決まってる。全身を鏡に写す。うん、ばっちり。黒のヒラヒラのミニ・・・淡いピンクのキャミ・・・今はやりの丈の短い白のダウン・・・・。でも私がミニをはくとなんでがきっぽくなっちゃうの。まあ、いいかぁ。本当はかわいい系ファッション雑誌そのままのコーディネイトだよ。あっ、もうこんな時間。私はかたわらの荷物をもって急いで家を飛びだした。
ちょっと気合は入ってるのには理由があるんだ。もちろん、聡史のこと。秘密にしてるんだけど、わたしと聡史は付き合ってるんだ。で・・この前なんだけどデートの時帰り際にキスをしようとしてきたんだ。うん、すごく嬉しかったよ。聡史のこと本当に好きだもん。でも、身体が受け付けなかった。それは、引きこもりの原因になったトラウマのせい。それから、私たちちょっと気まずい感じになってるの。だから、この旅行で聡史と仲直りできたらいいなって。それから、もっと関係が深まると嬉しいな・・・聡史とならいいよ・・・今度は私もトラウマと戦うよって決めたんだ。
「おーい、また遅刻かぁ!!」
遠くからマスターの声。あっ、5分遅れた。それにみんなジーパンにジャンバーじゃん。わたしだけ気合はいってるの。やだっ。
「ごめんなさ~い」
わたしは遠くから手を振る3人のほうへ、飛び込むように走っていった。
★
「じゃーん、重大発表があります。」
いままで雑談をしていたわたしと直美さんはマスターの方を振り向く。店が閉まった後、わたしたちは控え室でお茶をしてから帰るのが日課になっていた。どうせ主人も遅いし、いい気晴らしになっていた。
「どうせまた詰まんないギャグでもかんがえたんじゃない。」
興味なさそうに直美さんが言う。うん、ありえる。でも若い子って強い。わたしなら心で思ってもいえないよ。お客様にも平気で噛み付くし、でもそんなところが直美さんのいいところだった。わたしより先輩だし、年下ながら頼りにしている。
「じゃあ、直美はいいんだな。」
「何よ。聞くだけ聞いてあげる。」
直美がちょっとちらっとマスターを見る。
「じゃあ、発表します。慰安旅行で二泊三日の温泉旅行に行くことになりました。」
「ふぅん・・・・」
直美さんはちらっと聡史を見る。
「聡史と俺はいくけど、直美は欠席っと」
マスターが言う。
「誰もいかないなんていってないじゃん。でも女ひとりとかいうのやだな。美奈子さんは?」
みんなの視線がわたしに集中する。
「うん・・・主人に相談しないと・・・」
温泉なんて久しぶり、独身の時以来かなぁ。まぁ、そんなにいきたいとかいうんじゃないけど。直美さんもひとりではかわいそうだし。直美さんに妹みたいな親近感をかんじているし。でも、行くっていったら許してくれると思う。やさしい人だから。
「じゃあ、明日までに返事くれるかな。直美はどっちでもいいから。」
マスターのおなかに直美さんの強烈なパンチが飛んだ。
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