2ntブログ

プロフィール

闇縄悪夢

Author:闇縄悪夢
FC2ブログへようこそ!


最新記事


最新コメント


最新トラックバック


月別アーカイブ


カテゴリ


★カウンター★


■ フリースペース ■

 はじめまして、闇縄★悪夢です。  DTIブログでSM小説を書いていましたが、ブログサービスをやめるらしいので、お引越ししてきました。  ちょっとスランプ気味なんですが、がんばって更新しますので、よろしくお願いします。
 
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 
第一章 プロローグ
1

「いらっしゃいませ!!SWEET JUWELRYへ」
満面の笑顔で元気に言う。それが、お客様の笑顔を引き出す秘訣。
「何にしようかな。店員さんお勧めは何?」
「はい。こちらのミルフィーユとか。チョコレートケーキもお勧めです。」
「じゃあ・・・それ2つづつ・・・それとレアチーズケーキも2つ・・・」
 お客様がショーケースを覗き込みながら言う。すばやく箱を作って・・・はさみでケーキを入れていく。その間に隣の美奈子さんがレジを打つ。
「1400円になります。」
 美奈子さんの笑顔。お客様の目はそっちに吸い寄せられる。もう・・・こちらを向くこともない。そう、美奈子さんはすっごく美人な人妻。彼女が来てからなんか男性客が増えたような気がする。わたしは高校生とかOL専門。みんな私のお勧めを聞きにくる。わたしたちは最強のコンビみたい。
 お客様はお金を出すと、恥ずかしそうにうつむいておつりを受け取る。そう、美奈子さんの直視攻撃に耐えられないのだ。いいおじさんなのに・・・それから美奈子さんは人妻だよっ。私たちは顔を見合わせる。
「ありがとうございました。」
 息のぴったりあったお辞儀をする。そして次のお客さまに笑顔を向ける。
「いらっしゃいませ!!」

 私、星川直美、19歳。ここでバイトしはじめてからもう1年になる。今は元気いっぱいだけど、本当はひきこもりだったんだ。だから最終学歴、高校中退って感じ。うん、今は大丈夫だよ。高校のときいろいろいやなことあったけど、ここで働きはじめて、生きてるってことが大切なことだってわかりはじめた。それから世の中は悪意に満ちた人だけじゃないってこと。
「おはよう!!直美はいつも元気だなっ。」
 店長が店に入ってくる。
「もう・・・店長遅刻だよっ。今日も聡史が店あけたんだからね。」
「すまん、すまん」
 頭を掻きながら首をすくめたしぐさ。もう、だらしなくてたよりにならないんだから。
「おはようございます。」
 美奈子さんがそんなわたしたちを見て笑いながら挨拶をする。
「おはよう。あいかわらず美人だね。それに比べて直美は・・・・」
 わたしと美奈子さんを比べるように見る。どうせわたしは男みたいでがさつですよ~だ。わたしは思いっきり顔をしかめて舌を出した。それから、店長の背中に強烈な一撃。平手でパーンってすごい音がする。
「イテッ・・・ごめん・・・ごめん・・・・直美ちゃんも十分かわいいよ。」
「店長。はやく仕事してください!!」
店長はわたしの声に押されるように作業場のほうに消えていった。振り返ると美奈子さんがつぼにはまったらしくおなかを押さえて笑っていた。わたしは照れ隠しするように舌をぺろってだして微笑んだ。


 あ~おなかいたいよ。もう、店長と直美さんっておかしいんだから。漫才ばっかしないでよ。でも、直美さんって不思議な子。いまどきの子って感じなのに、ぜんぜん悩みなんてないっって顔してるのに、前にきいたらひきこもりだったって。そんなこと信じられない。でも、すごくいい子だからいろいろ溜め込んじゃうのかな。
 でも、わたしも彼女と一緒。押しつぶされそうなほどの悩みがある。それはわたしが不妊症だということ。一生子供の産めない身体だって診断されたときはもう世の中が真っ暗になった。でも、主人はあいかわらずやさしいし、その優しさがすごく負担になっていた。わたしと主人は社内結婚だった。役員秘書をしていた私。そして主人は企画部の主任。結婚して4年、子供に恵まれなかった。それで、30になるまえにと、主人と一緒に検査を受けに行ったのだった。変ないすに座らされて拷問のような検査を受けた結果。わたしに下されたのは死刑宣告に等しいものであった。
 本当に目の前が真っ暗になった。その夜、主人に別れようって言った。でも、それは受け入れられなかった。そして、今も夫婦として過ごしている。ここに来たのも、それが原因。家にいると、自殺したい気分になる。それで、主人の紹介でここでパートをし始めた。マスターは主人の友達ということですぐに私を受け入れてくれた。
 でも、本当にこのお店ってアットホームですごく気がまぎれる。元気な直美ちゃんに、面白い店長、それにパティシエの聡史さんはぞくっとするほど綺麗な顔をしてる。それにいまどきの子に珍しく礼儀正しくて真面目。表には出さないが直美ちゃんが惚れ込んでるってうのも納得できる。ううん、わたしの勘だけど、ぜったい間違いない。
 そのとき、聡史さんが出来立てのケーキを運んでくる。急に落ち着かなくなる直美さん。わたしもこんなだったかなっ。私はあったかい気持ちで二人を見つめた。

コメント

コメントの投稿



管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

■この記事のトラックバックURL

⇒ http://anjyou.blog.2nt.com/tb.php/57-cd7e707c

この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)

■この記事へのトラックバック

 | BLOG TOP |