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闇縄悪夢

Author:闇縄悪夢
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 はじめまして、闇縄★悪夢です。  DTIブログでSM小説を書いていましたが、ブログサービスをやめるらしいので、お引越ししてきました。  ちょっとスランプ気味なんですが、がんばって更新しますので、よろしくお願いします。
 
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19

 最後の奴隷のお披露目が終ると、少しの休憩を挟んでオークションになる。バイヤー達はその間も奴隷を確かめようと目当ての奴隷に近寄ってくる。あっという間に私とめぐみの周りがバイヤーで一杯になった。しかし、その中に彼はいない。私はバイヤーに身体を見られながらも目で彼を探す。その目には彼の姿は映らなかった。さっきのは、私の幻覚かもしれない。そう思っても彼をさがさずにはいられなかった。
 また、銅鑼が鳴らされる。私達は舞台の下に並べられた。そして1番の女性がステージに上げられる。
「一番、300万からです。」
 司会者が告げる。一瞬の沈黙。そして、320という声があがる。他から330。英語で350。少し沈黙。司会者がマイクを口に当てようとしたとたん。360と言う声。続けて370。その後、また沈黙が流れる。そして、380の声。会場がざわめき出す。緊張感の解ける音だった。司会者がマイクを持つ。
「一番!380万で落札です」
 一番の奴隷が降ろされ、2番の女性が壇上に上がる。
「続きまして、二番、最低落札価格200万」
 オークションは続いていく。その間も私は彼を探しつづけた。彼に買われる、淡い期待。本当にさっきのは私の作り出した幻覚かもしれない。でも、その幻覚さえ信じたかった。もう少し夢を見ていたかった。それほど信じたくない暗い現実が私の前に広がっていたのだ。少しの希望でも持っていないと身体がバラバラになりそうな感じがした。
 
「7番、最低落札価格250万」
 34歳の石野裕子という女性。地味な風貌に少し太めの身体だった。その女性が壇上にいる。会場は最初からざわついたままだ。誰も彼女を見ていないように思える。司会者が舞台の隅に行きある男と話す。たぶん彼女を売る人なのだろう。司会者が中央に戻ってくる。
「誰もいらっしゃらないですね。それでは、最低落札価格200万からで仕切り直しです」
 それでも、誰も手を上げない。女性は顔を手で覆って肩を震わせる。女性としてのプライド。彼女を支えているひとつの物が音を立てて崩壊する。
「仕方ありません。これが最後です。150万からスタートです。」
「150万」
 明らかに日本人ではない男が手を上げる。他は誰も興味を示さない。さっきの男がニヤリと笑う。
「それでは150万で落札です。」
 さっき、休憩時間にバイヤー達が話しているのを聞いた。その男はここでハイエナと言われるバイヤーらしい。売れない女性がダンピングにはいると死臭を嗅ぎ付ける的確さで底値で拾う。そして、噂では特に外国の売春宿に連れて行くとのことだ。その男に買われて日本に戻ってきた女性は一人もいないとのことだった。
 泣き崩れる女性を無理やりに舞台から降ろす。次の女性が舞台に上がり、彼らにとって新しい商談が始まるだけだった。私達にとっては重要な決定も、彼らにとっては日常的なことだった。奴隷が死のうと生きようと彼らにはまったく関係のないことだった。

 次々と奴隷達は落札されていく。次はあの少女だ。壇上に少女の白い裸体が震えている。
「さて、10番、700万から!」
 会場が静まり返る。バイヤー達の目が真剣になった。沈黙を引き裂くようなダミ声。
750万。それが口火となる。780、800、850。値段が上がっていく。900。一気に飛ぶとしばらくの沈黙。いままで黙っていた紳士が立ち上がり大台を変える。1千。しかしそこで終らない。1050、1070、1080。値段はまだ上がる。1100。もう三人の男だけが立ち上がっているだけだ。お互い相手の顔色を見ながら値段を上げる。1150、1170、1180、1190、1200。ここで一人が席に座った。もう一人が勝負に出る。1300。しばらくの沈黙。バイヤーは勝ち誇ったような笑顔を見せる。もう一人が隣りの男と何か話し合っている。不気味な笑いを浮かべると手を上げ声をあげる。1500。そこであきらめたように、一人が席に座った。次だというように私に目を向ける。
「では10番。1500万で落札です」
 司会者が告げると、少女はバイヤーに向かって小さく一礼をした。その仕草が彼女の育ちの良さを偲ばせた。しかし、彼女に待っているのは地獄であることは容易に想像できた。彼女は舞台を降ろされ、入れ替わりに私が舞台に立った。

 私はバイヤー席を見回す。入り口から一人の男が入ってくるのが見える。私はそこにスポットライトが当たったような気がする。彼だった。彼は私の瞳の中だけの幻のスポットライトの中を歩き中段くらいの椅子に腰をかけた。
 私、さやかだよ。気付いてお願い。私は目を閉じて神様に御願いする。それから、無駄かもしれないが強く念じてテレパシーを送る。そんな無駄なことでさえ、やってみなくては気がすまなかった。でも彼は隣りの人と話をしていて私に一瞥だにしない。
「では、11番、最低落札価格500万からで御願いします」
 私の願いが届かないまま、オークションは始まった。さっきの少女と同じくらいのピリピリした緊張感が漂っている。
 1000。太い声。舞台の袖の平井がにんまりと笑った。でもそれで終らない。1010、さっきのハイエナと呼ばれた男。1100、1150、1160、1200、1210、1300、1310。ハイエナは、誰かが言った値段を10だけ上げる。余裕のある表情。私を絶対に競り落とすつもりらしい。
 1500!急に真吾様の隣りの太った白人が立ち上がった。1510。ハイエナはその男を睨みつける。1600。白人は挑むように言う。1610、ハイエナも負けてはいない。その他のバイヤーはこの時点で全員座っていた。
1700、1710、1800、1810。彼らは向き合いながら火花を散らす。さっきバイヤー達が私の側で喋っていた言葉を思い出す。私なら年間1000万は稼げるというのが彼らの見立てだった。二三年働かせて、またオークションで売るのも可能なのではという話だった。国内で働かせるには、未成年の少女より私の方が都合がいい、だから私の方を落札するという話だった。
1900、1910。私の命の値段は上がっていく。ついに白人が2000という言葉を口にする。2010、ハイエナは少し躊躇しながら言った。その弱い動きを見逃さない。
2500、白人が言うとハイエナは椅子に座り込んだ。私が白人の席を見ると、もう真吾様の姿はそこにはなかった。
 私が舞台を降りると、最後の女性が入れ替わりに上に上がった。彼女は1310万での落札であった。もちろんバイヤーはハイエナであった。

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