32
今日は聖也様が帰ってくる日。
でも、わたしはアカズノマにつながれたまま。
綾菜様に言っても微笑んでいるだけ…
カミングアウトするしかない。
綾菜さまも愛している。
でも、彼のことも…まだ…
わたしがこんな恥ずかしいマゾだってことを知ったら…
彼は、どうするだろう。
ネットで秘部まで晒したわたしを…
揺れ動くわたしの心。
ドアが開く音…
コツコツと革靴の音が石の床に響く。
綾菜さまの足音ではない。
全裸で首輪だけのわたし。
わたしは顔をあげられない。
足音が檻の前で止まる。
彼のはいている顔が映るくらいに磨かれたフェラガモの靴。
「若葉…」
彼の声が上から聞こえる。
「ごめんなさい…あなた」
謝るしかない。
「綾菜!」
彼が綾菜さまを呼ぶ。
「違うの、綾菜さまじゃないの。
わたしが全部悪いの。
わたしは淫乱で変態のマゾなの」
涙がこぼれる。
もう、彼の奥さんではいられない。
檻の扉を開けられる。
綾菜さまがリードを持って引っ張る。
それに導かれるまま、檻の外に。
彼の手がわたしの頭に伸びる。
「綾菜。
ちゃんと調教してくれたみたいだな」
「ええ、仰せのままに」
わたしの頭を彼の手が撫でる。
「わたしが頼んだんだよ。
アカズノマを若葉が覗いたら、こうするようにってね。
これで、本当の夫婦になれる。
隠し事のない本当の夫婦にね」
わたしは彼を見上げる。
あいかわらずやさしい目で包み込むように見下ろされているのがわかる。
わたしの目からは別の意味で涙がこぼれる。
「僕の家はね…代々忍者の家系なんだよ。
その仕事は形を変えて今も続いているんだ。
まあ、ゆっくり理解してくれたらいい。
そして、わたしは一族ではない君を愛してしまった。
だから、綾菜に頼んだんだ。
もし、アカズノマを覗き見て、若葉がそれに興味をもったら、僕たちの仲間にするようにって。
だから、すべての責任は僕にあるんだ」
彼の手がわたしの首輪をはずす。
わたしは、彼をみつめる。
すいこまれそうな瞳を。
もう、以前の彼とは違うオーラを感じる。
「あの…」
「いいんだよ。ここから逃げても。
あのドアから出れば普通の生活に戻れる。
まだ若葉なら芸能界に復帰できるし、多少の慰謝料の用意もある。
沢水のスキャンダルのことだけは黙っててもらうけどね」
わたしの前にしゃがむ彼。
わたしは、すぐに彼の胸に飛び込む。
すこしもためらうことはなかった。
そして、彼はわたしに唇を重ねた。
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