16
「新しい奴隷や。かわいがったってや。」
平井の後ろから、まだあどけない少女が顔を出した。小麦色の顔、白いメッシュを入れたチャパツ。目元を強調するような化粧をしている。しかし、表情はその格好に似合わないほど暗く思える。顔が涙で濡れている。たぶん平井の洗礼を受けたのだろう。
「おい、亜衣っ。ここで、このおねえちゃん達と暮らすんや。」
平井が少女の赤いダッフルコートを剥ぎ取った。中は全裸。そして私達の方に蹴り飛ばす。私達は少女を庇うように抱いた。
たぶん高校生。硬くて青い蕾であった。こんな子まで、酷い。そう思ってもなにも言えない。
「おい、理美、奴隷の作法教えるんやぞ。もしこいつがそそうしたら、おまえらも連帯責任や。わかったな。」
少女は私の胸で泣き始めた。私はそのバラバラになりそうな震える体をギュッとだきしめることしか出来なかった。
それから3日後、朝起きると亜衣は部屋から消えていた。あのダッフルコートだけを着て飛び出したのだった。平井はこの3日間付きっきりで亜衣を調教していた。平井も完全に奴隷になったと思ったのであろう。最後の日は積極的に平井を誘惑するように奉仕していたのだ。頭のいい子だった。平井を油断させてその隙に逃げ出したのであった。私達は、彼女が無事逃げられるように祈るだけだった。私達にきついお仕置きが待っているのも忘れて。
遅く起きた平井は、私達に殴る蹴るの暴行を加えた。
「おまえらの責任や。あとで、酷い目にあわせたるからな。おぼえとけ。」
捨て台詞を残して、平井は部屋を飛び出していった。
この子いいな。私が亜衣に感じた印象だった。援交をやっていて平井につかまったらしかった。私達だけの時はよく喋り、よく笑った。寝るときは彼女を暖めるように間に挟んで眠った。私達を知佳ネエ、理恵ネエって呼んだ。
「あのね。私達エンコーやってるけど。やっぱバックがあるんだよ。勝手にできないからね。いろいろヤバげなこともあるし。」
「うんうん・・・」
「だからね。もしここを抜け出せたら。あのおっさんただじゃすまないと思うよ。」
「そうなるといいな。」
「うん、絶対地獄に落としてやるよ。」
憎憎しげに亜衣は拳を握り締めた。その上にポタポタと涙が零れ落ちた。
その夕方。顔をボコボコに腫らした平井が帰ってきた。私と理美は目を見合わせる。ざまあみろ、でも笑いをかみ殺した。平井は不機嫌そうに椅子に腰掛けると、冷蔵庫から出したビールを一気のみする。
「しみるわ。」
血がにじんだ唇をさすりながら、鞭を持って私達に近づく。
「おまえらのせいやで。」
血走った目で私達を睨むと、めちゃくちゃに鞭を振り回す。私を抱くようにして理美が庇う。その背中に鞭の雨が降り注いだ。
「どうするんや。あいつやくざの女やったんや。慰謝料二千万払えってぬかしよった。まぁ、抵抗して1千万に負けてもおたけどな。」
嘘だと思った。たぶん、殴られて脅かされて泣く泣く帰ってきたのだった。そういう卑屈な男だった。
「おまえらにはろうてもらうで。」
もう、無理。相次いでの無心に私も理美も勘当状態になっていた。
「もう、無理です。」
私より先に理美が答える。
「そうか、しゃーないな。ほんなら風呂にでも沈んでもらおか。毎日、おまえらの好きなチンポを何本も咥えられるんや。おまえらみたいな変態女には天職やろ。」
二人は黙って俯く。少なくともここよりましかもしれなかった。
「ほんなら、ええな。俺が働き先捜したるわ。まあ、おまえらやったら二三年ででてこれるわ。そしたら、また調教したるからな。」
喜々として電話を始める。もとよりそのつもりだったのだろう。風俗専門の求人誌まで買ってきているのだ。
「女の子二人なんやけど、前借で働かしてもらえんか。すっごいええ子やで。」
「えっ、一人50万?」
「二人ともすごいスケベな女で。ケツの穴まで調教済みですねん。なんでもしよります。NGなしってやつですわ。」
「一人100万が限度。働きによったら増額するって。なんとかなりまへんか。」
「ほんなら他あたりますわ。」
平井は必死でセールスする。しかし、初めての者に500万ずつ前貸しする店はなかった。どこも似たり寄ったりだった。平井は受話器を叩きつけた。
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