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お店のドアを開ける・・・・
ブラックローズ・・・重い木のドア・・・・
それを開けると、思ったより広い空間が現れた・・・・
コートを受け取る黒服・・・・
まるで、一流のホストのような人・・・・
彼に真由美さんの名前を告げる・・・・
彼が手を差し出す先・・・
丸いカウンター・・・・
ロマンスグレイのバーテン・・・・
その前に後ろ姿の女性・・・・
背中の大きく開いた黒いドレス・・・・
アップしたベージュの髪・・・・
なんかそこだけスポットライトが当たっているように感じるほどのオーラ・・・・
その方向へ歩いていく・・・
振り向く彼女・・・・・
それはわたしが想像したとおりの真由美さん・・・・
まるで、女優のように優雅に微笑む・・・・
わたしは小さく会釈する・・・・
「静香さん?」
「はい・・・・・」
黒服が真由美さんの隣の席に案内する・・・・
「真由美です・・・・」
「あっ・・・静香です・・・・」
「かわいい人・・・クスッ・・・・」
真由美さんの微笑みになんか一瞬で緊張が解ける・・・・
わたしも黒のベロア地のワンピ・・・・
真由美さんと違ってミニ・・・・
パールのストラップでかわいいタイプ・・・・
それからファーのティペット・・・・・
とことん可愛く決めている・・・・
「誰かに似てるっていわれない?」
真由美さんはすこし考えて最近の歌姫の名前を出す・・・・
そう、いつも言われる名前・・・・
そして、自分自身・・・それを意識していた・・・・
メイクとか服とかヘヤーとか・・・それらしいものを選ぶようにしていた・・・・
ときどき、街をあるいていても指をさされることとかある・・・・
すぐに違うって気づくんだけど・・・・・
「お飲み物は、どういたしますか?」
バーテンがわたしに微笑む・・・・
「えっ・・・あの同じので・・・・」
真由美さんの前に置かれた赤いカクテルを指差す・・・・
「かしこまりした。」
バーテンは慣れた手つきでお酒を作り始める・・・・
目の前に置かれる血のような赤い色のお酒・・・・・
それを手に取ると・・真由美さんとカンパイをする・・・・
グラスを傾けると・・・・
乾いた喉に甘い液体が流れる・・・・
わたしは真由美さんとたわいもない話をしながらお酒を楽しんだ・・・・
「でも、SMっぽくないですね・・・このお店・・・・」
「うん・・・・まだねっ・・・・」
いたずらっぽく微笑む真由美さん・・・・・
お酒ですこし身体がほてったかんじ・・・・
さっきまでの緊張が解けてくる・・・・
わたしにとって大冒険だった・・・・
ひとりでバーにくるのも・・・
それも絵に描いたようなSMバーを想像して・・・・
でも、普通・・・いえ・・・わたしが来たことのないような高級なバーだった・・・
「でも、想像してるんでしょ・・・チャットのようなお店・・・」
「えっ・・・違います・・・・」
そう、ドアを開けるときは心臓が痛いくらいにドキドキしていた・・・・
「全裸でお客様を接待するみたいなこと・・・」
囁くようにわたしの本心を見透かした言葉・・・・
「ほら、見て・・・・」
「あっ・・・はい・・・・」
「みんなこっちを見てるよ・・・たぶんあなたとプレイしたいっていう視線・・・・」
「あぁ・・・違います・・・・」
「あなたの身体を舐めるような視線を感じない?」
あわてて身体を縮める・・・・
ドキドキがまた戻ってくる・・・・・
耳元でささやく真由美さんの言葉・・・・
それがもう一人のわたしを引き出していく・・・・
自然に息遣いが荒くなって、お酒でしめった唇が半開きになる・・・・
「だれか呼ぼうか。」
いたずらっぽく真由美さんが言う・・・
わたしは首を左右に振るのが精一杯・・・・
「いいです・・・・」
真由美さんの手が腰にまわる・・・・
背中に当たる真由美さんの胸・・・・
すごい、あったかさを感じる・・・・・
「じゃあ、ちょっとだけ体験してみようか・・・・」
「えっ・・・だめです・・・・・」
「たぶん世界がかわると思うよ・・・・」
「あぁ・・・だめっ・・・・」
耳元でささやく悪魔の言葉・・・・
ううん・・・天使のささやきかもしれない・・・・
その言葉にとらわれていくような気がする・・・・
言葉では否定しても身体は反応してしまう・・・・
そして、わたしは真由美さんに誘われるまま席を立つ・・・・
真由美さんに支えられるように・・・・
そして、導かれるままに席をあとにして歩き出した・・・・
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