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「おかえりなさいませ。ご主人さま。」
すこし前かがみになって、満面の笑顔を浮かべる。もちろん営業スマイル。
「奈帆ちゃん、今日も指名させてもらったよ。」
「うん、ありがとっ。」
腕にまきついて、お席に誘う。そう、ここはメイドクラブ・・・メイド喫茶とちがうのはお酒をだすこと、あとは同じ。メイド服のわたしたちがお客さまについて、お話をしたりゲームをしたりするだけ・・・・。そして、この店のナンバーワンがわたし・・・神野奈帆だ。高校生のときは自分の幼い感じにコンプレックスとか持ってたけど、ここではそういうのがプラスになる。お客さまもなんかオタクっぽい人ばっかだから、優しいし、あんまりへんなことはしないし・・・・それにお金だっていいし・・・・あんがい天職かもっ・・・・。
お酒を用意したら、お話を始める。お客さまは中山さん。そう最近よく来てわたしを指名してくれる。30歳くらい・・・・何をしてるのかわかんないけど・・・わたしが営業メールしたらすぐに来てくれる。ぜったい私に惚れてる。でも、わたしはタイプじゃない。なんかオタクっぽい人って優しいけど・・・彼氏にしようとは思わない。
「ねぇ、いつものゲームしようよ。」
「うん、ご主人さま。」
ディスプレイのスイッチを入れる。机の下からコントローラーを出す。そう、対戦型格闘ゲーム・・・・それもうちの店オリジナル・・・・。ここでしかできないゲームだ。そして、このゲーム1回1000円なんだけど、エッチ仕掛けがある。負けるたびにキャラクターが脱いでいくのだ。そして、わたしも負けたら服を脱ぐってことになっている。でも、せいぜい脱いでも、ソックスとかエプロンくらい・・・・たまにサービスで服までいくことあるけど・・・・ちゃんと見せ下着を履いているから大丈夫だ。もともと、わたしはゲームが得意だし・・・このゲームの女性キャラは鬼ほどつよい・・・。完全に無敵モードだ。でも、勝ってるだけじゃダメ・・・・それがわたしたちの腕のみせどころ・・・ぎりぎりみたいに見せかけて勝つ。これがテクニック・・・・。
「でも、またぬがされちゃうかなぁ。」
「うん、今日こそ・・・・」
「でも、ちょっと練習したんだよ。」
「じゃあ、今日は手ごわいかもな。」
中山さんはガイってキャラを選ぶ・・・ストリートファイターなきゃらだ・・・わりとストレートな攻撃をしてくる・・・・そしてわたしはマリア・・・背が小さくてスピードのあるキャラ・・・なんか自分に重なる感じで好き・・・・そして、空中戦みたいなのが得意なとこも・・・・。女性キャラはみんなメイド服を着ている。わたしたちみたいに・・・。
「じゃあ・・・いくよっ・・・・」
「うん・・・・」
いきなりマリアがガイに回転しながら蹴りをいれた。ガイはダウンして点滅する。
「先制攻撃!」
「あちゃ~やられた。」
中山さんの情けない顔に向かって、わたしは笑顔でVサインを決めた。
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