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 はじめまして、闇縄★悪夢です。  DTIブログでSM小説を書いていましたが、ブログサービスをやめるらしいので、お引越ししてきました。  ちょっとスランプ気味なんですが、がんばって更新しますので、よろしくお願いします。
 
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(やみさまからいただいたONE NIGHT STORIES 2ND SEASONのサイドストーリーです。場所は悪海さまの家に帰るタクシーの中です・・・)

タクシーの窓から見える光景がいつの間にか変わっていた。
スピードは60?/h位だろうか、標識もない閑散とした道路をひた走っている。
『成宮城(なみぎ)へ』
黒田佳奈子はそこがどういう所かは知っていた。
金持ち…いや大金持ちでないと住めない超高級住宅街。だいぶ離れた隣町の山の手…
まるでアメリカかオーストラリアか?という日本という島国の中にあってはならない土地の使われ方をしている場所。
普通のサラリーマンでなくとも一般企業の重役レベルでも無理だろう…そういうクラスの人々が住まう場所。
『斉藤』さんの口から何気なく出された言葉にショックを受けた。
『斉藤家』というものの凄まじい財力に恐怖を感じた。
だから…その『斉藤』さんならぬ『悪海』様より『お願い』されたとき、その意味が分からなかった。
今着ているくたびれたロゴTシャツですら2万円・・・スカートにいたっては高級ラムスキンだか何だか知らないが10万円もする代物。
確かに今まで働いて貯めたお金の総額は500万円位にはなるかもしれない。その僅かの蓄えを元本保証型の投資信託に預けてちょっとでも増やそうとしている。
『斉藤』さんの所持するゴールドカードでは一括で余裕で動かされる金額。
でも、直ぐにその真意に気付かされた。相手の要求はその額ではないこと。多かろうが少なかろうが全て取り上げる…そういうことに。
所持金が無ければきょう日、何も出来ない。あらゆる交通機関の利用も、喉が渇いても自動販売機で缶ジュースを買うことすら出来ない。電話すらできない。
すなわち、移動の手段と欲求の充足を諦めなければならなくなる。いついかなるときも『斉藤』さんにお願いしなくてはならなくなるということ。依存しなくては生活が出来なくなるということ。
黒田佳奈子は聡明な女性であったことも災いした。銀行の通帳の暗証番号からカードの番号まで全部で10近くあるそれを全て正確に暗記していた。
「ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・・・・・」
記憶が怪しくなってきたら、『悪海』様は記憶が明瞭になるようにお手伝いした。
形良く弾力のある胸そのものとその先端の神経の集中している所に穿ち取り付けられたリングを指に引っ掛けたりして遊んでいた左手を抜き取って自分の手提げのバッグ…それはプラダの薄いピンクの地にピンクの楕円形でロゴが型押しされているいかにもカワイイといったもののファスナーを開いて少しも可愛くないものの束を取り出して美女の鼻先に突き出した。それは、いつぞや見せられたあの写真の束だった。
すなわち、『美月』の痴態の収められた写真をタクシーの窓から1枚ずつばら撒くと脅した。そして、それがただの脅しでない証拠にとりあえず顔の映っていない(代わりに性器と肛門がばっちり写っていた)ものを窓から1枚投げ捨てた。
それはしばらく風に舞い何処とも知れず飛び去って視界より消えた。
『次は顔が写っているのにするから』耳元でそう囁く。残酷で冷淡な声音。ほんの僅かの抵抗の意思すら根こそぎにして消してしまう。そうしておきながら右手の指遣いは一瞬の停止もさせない。
思わず涙ぐみ半泣き状態の美女の涙を舌で掬い取る『悪海』様はまさにイタズラ好きで残酷な小悪魔そのものだった。
携帯電話の入力はパソコンと違い入力がややこしい上に変換を度々しなくてはならない。右手1本のたどたどしい手つきは日頃携帯メールを数秒間で入力送信する同一人物の『黒田主任』の指遣いと全く違っていた。
「あ・・・うっ、ど・・・」
『どうしてかって…?決まっているじゃない。佳奈子を飼う為よ。も・ち・ろ・ん、選択権はあげる…。ここで、調教を再開して欲しいなら今は聞かないでいてあげる。素っ裸になってもらう…せっかく着けてあげた素敵なアクセサリー隠すのもったいないよね。でも、それが嫌なら…』
そう耳元で囁かれた黒田佳奈子は半分くらい入力していた携帯を一旦閉じて右脇に置きのろのろと上着を脱ぐために手を交差させてそれぞれの裾に手を当てようとした。
『ちょっと、佳奈子!何考えてんのよ。わたしの言う事に素直に従いなさい。こんなところで脱ぐなんて!わたしが命令もしていないのに・・・なんて恥知らずなの!』
一体、相手に何を言われたのかキョトンとした顔で、次いで意味が分からないというような途方にくれた幼い少女のような目で…それはまさに庇護を求める目。弱々しげな目を『悪海』様へ向けるのだった。
かつて『黒田佳奈子』が演じた『美月』と目前の女性の姿がオーバーラップする。
『ごめん、ちょっといいすぎちゃった。佳奈子は携帯へ残りの分を入力して。あともう少しで着くと思うから…』
『作業は止めずに聞いて。わたしはね、貴女を飼いたいの。販売の買うじゃないわ、飼育の飼う…どういうことか理解できる?』
『まぁ、こちらも最初から理解できるとは思ってないけど…。飼われるという意味のことよ。』
『通常はねお妾さん…囲われ者ともいうわね、『飼われる人』の有名な例。ヤクザや金持ちに生活の面倒…主に金銭面ね…をみてもらう女の人のこと』
『…その代わり、命以外…時には命ですら支配される。主人の命令には絶対服従で不服従や遂行の不首尾の場合は厳しい罰が与えられるの。逃げる事も誰かに助けを求める事もできない。』
『現代版の奴隷ね。飼われると言う事は主人に隷属する事。絶対服従の掟と気分次第の主人の罰を甘受して不服も文句も言えない常態に置かれるという事。また常に主人の寵愛を得られるよう腐心しなくてはいけない。』
『でも、わたしはそんなに酷いご主人様になる気はないから…素直で良い子にしていたらご褒美もあげるつもり…』
『それに、わたし的に『黒田』主任と『斉藤』さんの関係は気に入っているの。出社してから退社する5時まではマトモなニンゲンでいさせてあげる。それ以外は奴隷だよ。』
恋人が相手に睦言を紡ぐように、相手の耳元に毒を孕んだおぞましい言葉を囁きかけた。
佳奈子の愛液で濡れまくった右手をTシャツでふき取りながら布地の上から胸を揉む。
切なげに悲しげな嗚咽に混じるかすかな悦虐の喘ぎ声。
聞きたくない言葉、知りたくない物、それらが精神を汚染していくのが分かる。背中側にもう一本の手が回され、撫で回される。
『主任、逃げちゃダメだよ。目の前から消えたら・・・絶対どこまでも追いかけて見つけるから。そのときは絶対逃げられないように手足をちょん切るかも。』
…そこには生命の尊厳とか生まれながらの平等(実際幻想だが)や基本的人権といった日本国民が持っているとされている権利が全て無視されていた。
あらゆる自由を奪われ、言い成りになるしかなく、下される罰に戦々恐々しながら主人の顔色を伺う…そういう境遇にさせようと相手は言っているのだ。
許されざる酷い事をされているという認識は黒田佳奈子の心のどこかにある。・・・嫌だ誰か助けて怖いお願い・・・拒絶の心
でも、どこか甘美に感じる部分があった。認めたくはないが妖精じみた女性に隷属して思う存分辱められてみたい・・・もっと、めちゃくちゃにして、身も心も貴女に捧げます・・・受諾の心
もはや、彼女は自分がどちらを本当に望んでいるのか分からなくなりかけていた。
覚めない悪夢のようなおぞましく狂った正気とは思えない思考と被虐を期待する浅ましきマゾヒストの欲望が反応し、いまや嬲られてもいない身体の最奥から歓喜の液体が吐出されるのを感じるのだった。


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